ガット張り うんちく |
ガットの張り具合、俗に言う張り上げポンドは統一されたものではありません。
20年ほど前までは硬式テニス以外、機械で張り上げることはありませんでした。 ところがガット張り機たる機械が普及してきたおかげで現在ではガットは機械で張り上げるもの、と言うのが当たり前になっております。 私がこの世界に入った頃は硬式のガットさえ先輩がペンチで引っ張ったり巻き棒を使用して手張りしておりました。(いつの時代?) 国産のガット張り機が無かったためドイツなどから油圧式の張り機を輸入してガット張りを始めた記憶があります。 そんなことはどうでも良いとして、現在では色々なガット張り機が安価なものから高価な物まで販売されて出回っています。 それまでは軟式やバドは手張りが当たり前でしたので強く張り上げるには長年の感とそれなりの技術が必要でした。 ですので始の頃はしょっちゅうラケットを折っていたものです。 もちろん当時と現在のラケットの強度もかなり違っていて、ガット張り機が普及するに従いラケットも強くなったように感じます。 手張りでは均一に張り上げると言ってもある程度の幅が生じます。また、縦横一緒に張り上げられませんので必ず変形します。 どこまで変形させても大丈夫か、それをどうやって元の形状に戻すか、が腕の見せ所だったのです。 が、これでは限られた人間しかちゃんと張り上げられません。 誰でも簡単により均一に張り上げる、言葉は悪いですがアルバイトでも仕事が出るようにするにはガット張り機が必要だったのです。 さらにメーカー各社にとっても手張りで変形させて張り上げる方法はラケットにかける負担も多大で好ましくないと言う理由から、出来る限り変形させないで張り上げられる張り機の発売を始めたのも機械張りが普及してきた要因の1つと言えます。 現在ではどこのスポーツ店に行ってもガット張り機は見かけますよね。 私にとってはこれは信じられない光景なのです。(爆) と言うことで、現在ではガット張り機の種類も多数に上り、その性能やスペックにも大きな開きがあります。 実は同じポンドで引っ張っても現実的には大きく違いが出るのです。 ガット張り機は大きく分けて、分銅式・スプリングアクション式・コンピューター制御式となります。 最も正確とされるのは言わずとコンピューター制御式、ついでスプリングアクション式となり、最も当てにならないのが分銅式となります。 が、これも張り手の技術によって大きく違ってきます。 スプリングアクション式でもちゃんと張り上げればコンピューター制御式を使用した場合と近い仕上がりが期待できます。 ガット張りを依頼する場合なぜか引っ張る強さで依頼しますね。ポンドという表示です。 実はこのポンド、全てのガット張り機が同じか?と言うと実はめちゃくちゃです。 コンピーター制御式のマシンでも機種が違えば誤差があり、厳密に言えば電圧の変化でも違ってくるそうです。 物差しのような確固とした単位があるものではないのです。 張力を調べるのにテンションキャリブレーターやテンションメーター等という測定器もありますが、これも誤差があります。 要するに統一された基準のない世界での話を皆しているのです。 ですのでガットの張り具合というのはそれぞれのお店や張り手によって大きく異なり、どこの張り上がりが正しいと言えるものではありません。 平均的な張り上がりから判断して、あそこは緩いとかあそこはしっかり張る、等と表現されていることになるのです。 出来上がりの違いは張り機や張り手の違いだけではありません。 無数にあるガットの種類によっても大きく異なります。また、このガットは季節により温度や湿度によっても変わってきます。 さらにそれぞれのガット張り機の設定、コンピューター制御式でプレストレッチ設定(設定ポンドよりも強く引っ張ってから戻す)が出来る場合の度合い(110%なのか120%なのかの違い)によっても出来上がりは違ってしまいます。 さらにさらに、張り方、色々ありますが2本張りなのか1本張りなのか、その順序と方法は、でも違ってきます。 もう何がなんだか分からないですよね。でもそれが現実なのです。 本来であればガット張り上げの基準は仕上がった状態の面圧です。 統一された規格の面圧測定器で話をすれば、ほぼ統一された単位となり同じ出来上がりが望めます。 しかしながらこの面圧測定器は普及しておらず、あったとしても統一された規格ではないので現時点では堂々巡りにならざるを得ません。 また、面圧で話をするようになると、どのような張り方や設定でその面圧にするか、と言った複雑な話になり、また限られた人しか対応できない仕事になってしまうのは明白です。 元来、ガット張りという行為は張り手をストリンガーと言ってある種、特殊な仕事とされています。 誰でもがちょっと練習したぐらいで出来る仕事ではありません。 特に不特定多数のトップ選手のガットを張り上げているようなストリンガーはより多くの知識と技術が必要となります。 (専属ストリンガーは契約選手が満足すればよいので楽ですが・・・) 上記のことをふまえて当方のガット張りに対する基準を明記させていただきます。 *コンピューター制御式のGOSEN GM−1300 を使用し、プレストレッチ設定 112%にて張り上げます。(プレストレッチ設定指定可能) *ご希望の無い限り基本的に1本張りにて張上げます。 *ポンド指定は縦のみ、横ガットはラケットによって違ってきますが原型に戻るようにそれぞれ変更・調整して張り上げます。 *縦横のご指定があればそれに従いますがそれによって引き起こる可能性のあるクレームには一切応じません。 注意事項 ラケットの張り上げポンド上限はそれぞれのラケットのカタログ表記を上限と致します。 *ゴーセンの30ポンド対応表記は瞬間風速的なキャッチコピーと捕らえておりますので当方では適用いたしません。 カタログ表記の推奨テンションを適応範囲とさせていただきます。 最後に ガットは強く張れればよいものではありません。 また、全て均一に張り上げられるのが良いものでもありません。 大原則はガットを張り上げるに当たって間違いなく張り上げる前の原型に出来る限り戻す事です。 (バドミントンの一部機種にはハイテンションで張り上げた場合どうしても戻らない限界があります) そうでなければラケットの性能が100%発揮できないと言っても過言ではありません。 ひどく変形したままですと当然スイートスポットの広さや位置も変わってしまいますし、ラケット自体の耐久性を格段に落としてしまいます。 また、良いガット張りというのは使用者が使いやすいように張り上げることです。 使用者の実力や技術を遺憾なく発揮できるように、そして不得意な部分をカバーしてくれるような張り上がりが望ましいことと考えます。 飛ぶ距離やスピードを張り上げの強弱で調整してはいけません。 もっと根本的な部分、たとえばガットの種類を変えてみるとかスイングスピードを早くできるようにとか、基本的な部分をレベルアップしようと考えなくてはならないと思います。 面圧を堅く張り上げるだけなら誰にでも出来ますが、張りたててから打ちやすく(ちゃんとスイートスポットが出来ている)使用者に優しいガット張りはその使用者を良く知っていなくては出来ません。いわゆる「味のある」ガット張りですね。 残念ながらこちららでは通信販売となるために上記のような対応は不可能です。 お客様の中には当方にてガット張り上げを依頼したが不満足な結果であった、と言う方もたくさんいらっしゃると思います。 いつも張り替えを頼んでいるお店がコンピューター制御式であるのに当方がバネ式で普通に張り上げれば間違いなく弱くなってしまいます。 初めてのお店などでガット張りを依頼するときには出来るだけそのお店のガット張り機や参考になる張り上げ済みのラケットがあれば確かめさせてもらうなど、より多くの情報を得て、とりあえず試しに張ってもらって、その結果から以後自分の中で調節して依頼するようにするのが賢いやり方です。 ガット張り上げ発送をご依頼いただく場合には上記のようなことをご理解の上御注文いただけますようにお願いいたします。 不安な場合はいつもの所でいつものように張り上げてもらう方が確実です。 当方でも出来る限りのご相談には対応させていただきますが限界があるのも事実です。 お問い合わせには対応させていただきますがご理解のほどをお願いいたします。 (バドミントン)ホームストリンガー、ユーザーストリキングの方々へ 特にガットをご自分で張り上げられる方は以下のことにご注意下さい。 バドミントンラケットをハイテンション(適用範囲目一杯)で張り上げるのが最も難しいガット張りです。 ラケットはわずか総重量90グラム程度の重さであり、ガットを張り上げるフレームだけで考えればわずか40グラムにも満たない部分です。 当然フレームの厚みはありますが中は空洞です。軽くするために素材の肉厚も限界まで薄くなっています。 これにあの細く強いガットをソフトテニス並のポンドで張り上げるとなるとそれは大変なこととなります。 ちょっとしたことでも結果が大きく異なり、かすり傷が命取りにもなります。 そう言う道具である、競技であることを念頭に置いてください。 基本的にガットをご自分で張り上げられるお客様には通常の保証が適用されにくいです。 これはメーカーの見解ではお客様がどのようにガットを張り上げておられるか、張り機は?設定ポンドは?技術は?等把握できない要素ばかりになるからだそうです。ですので適用ポンド範囲目一杯で張り上げる場合はそれなりに覚悟して対応してください。 特に張りムラや変形があるとラケットの耐久性を著しく落としてしまいます。 チェックの仕方 1.ガットを張る前の面形状を写し取るなりコピーしてしまうなどして元の形状を残してください。 2.張り上げ完了した時点で元の形状と比べてみてください。 3.ラケットによっても違ってきますが上下2ミリ弱程度までの変形なら合格です。それ以上や部分的に細くなっていたり太ってしまっている場合、不合格となりますので張り直しましょう。 ガット張りの基本は、縦は全て均一に(出来れば最後はくくり留めるときにゆるみますので少し強めにと言いたいところですがここを強く張りすぎると折れやすいのも事実です)、横は原型に戻るように調節しながらポンド数を変えて張り上げて行くものです。 縦が22ポンドで横は全て24ポンドではありませんので注意してください。 *バドミントンガットの張り方の講座を開くつもりは毛頭ありませんし、お金を取って教えるつもりもございません。 対応しきれないことと時間的余裕がないためですが、これで仕事をしておりますのでご了承下さいませ。 年を取るとそれなりに頑固で片意地になってしまいます。(爆)うんちくに対するメール、論争は堅くご遠慮いたします。 以上、年寄りのうんちくでした。ご静聴ありがとうございました。(笑) (2010.3 改訂) |